
油蝉の声を耳にして、すぐに蝉の姿を思い浮かべる人は、あまりいないだろう。
雨音を聞いて、雨滴のそれぞれが地面に接している瞬間を想像する人がいないように。
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どこかおかしい。どこか狂っている。暑い季節になると、僕はいつもあの音を聞いてそう思う。・・・・・・そして叫びたくなる。どうかその音をやめてくれと。
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「最後に、一つだけ教えて」
「知ってる?…僕、今日で、十歳になるんだよ」
『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介 新潮文庫
少し前に読んだとっても難しい不可解な小説でした。
だけど、必ずのめりこんでしまう人がいるだろうという、確固たる自信がある作品でした。
展開や登場人物にはめまぐるしさの中にわくわくするんですから・・・
ただ、異様な世界観にちょっとついていけなかったのが正直な感想でした。

「病気がもうかえられないものだったら、受け入れるしかないわ。でも病気の周辺にあるものは変えられるでしょう。病気にもかかわらず明るく生きるとか、病気にもかかわらず懸命に働くとか。呪っていたらかえられるものもかえられない」
私は悲しい
空は青く大地は緑。
それなのに私は悲しい。
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焼かれる人の祈りを
聞いたからだ。
大作です。ものすごく読みごたえのある作品で、作者のひととなりは、以前からファンなのですが、
改めて、好きになりました。
まじめで誠実で立派です。恋愛もいい!!!!!作者の描く女性はとてもいい!
それにしても、本書のように人々な古代から、「違い」に対して暴力や迫害、戦争をする生き物なのです。
日本での隠れキリシタンを連想させられる・・・・。
『人間の大罪』をあぶります。